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平成29年度一級建築士設計製図試験の総評
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小規模なリゾートホテル

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 29年度の一級建築士設計製図試験の課題条件は、概して奇をてらったような条件は含まれておらず、概ねオーソドックスな内容のものであったといえます。
但し、敷地北西側に、直径12mの円が内接する車回しのためスペースを取らなければならないという条件から、単純な長方形の平面による3層の建物を計画することは難しいため、必然的に北東側にL型の平面構成のプランとなります。 L型プランの建物は特に珍しいものではありませんが、一般的に長方形プランの建物に比して、ゾーニングや動線計画がやや複雑になり、難しくなるともいえます。
以上から、この試験では、上記のような平面計画をまとめるための、一定の建築計画力が身に付いているか否かが、重要な評価のポイントとなると考えられます。
次に、本試験の課題条件、計画上の留意点について、以下に記すこととします。

敷地条件及び配地計画

敷地の北側には道路が面しており、敷地は高低差4mの北側より南側への下り勾配となっていることから、北側道路より建物へのアプローチを取り、北側道路沿いのレベルから南への下り勾配となる部分に地下1階を、その上部に1、2階を各階の階高4mとして設ける定石通りの計画とします。
なお、敷地周辺の景観は南面と東面が最も良好で、西面も湖が望まれる良好な景観とされていることから、リゾートホテルとしての性格上、景観の眺望に充分配慮した計画とすることが重要です。

配地計画上は、敷地西側の共用駐車場からのアクセスを考慮して、北側の道路からの車のアプローチは、北西側に取ることとなりますが、課題条件より、直径12mの円に内接するスペースの車回しを計画する必要があり、更に2m程度の歩行者用のスペースを確保する必要があることから、最低14m程度は北側道路に対して、建物の北西側は空けておかなければなりません。

他方、建物の北側壁面の全ての北側道路との間隔を14mとすると、課題条件の建物の延べ面積を確保することが難しくなるため、必然的に、建物の北東側は北側道路寄りとなるL型形状のプランにならざるを得なくなります。以上から建物のプランは、L型形状となり、建物へのメインアプローチは建物の北西側に、管理動線等のサブアプローチは北東側に取ることとなります。

なお、敷地の条件としての建ぺい率60%は、リゾートホテル等が設けられるような環境の敷地として相応しいものと考えられますが、当然のこととして、平面計画上、充分留意しておく必要があります。

宿泊室の計画

本課題ではA、B、C、3タイプの宿泊室について、課題の指定数を確保しなければならず、また、リゾートホテルであるが故に当然の事として、全ての宿泊室から良好な景観が望めなければなりません。

この場合、宿泊室は、東、南または西側向きとし、2階に全ての宿泊室を計画することが、最も望ましい単純明快なプランとなります。それが難しい場合は、次善の策として1階に宿泊室の一部を配置することになりますが、1階は、受付、管理、共用ゾーン等が置かれることから、それらとのゾーニング上、動線上の分離等がプラン上のポイントとなります。

受付、管理、共用ゾーンの計画

受付カウンター等の受付ゾーンは、管理ゾーンと半ば一体となってホテルの運営、管理を担う重要な部門であり、他方、玄関ホール、ラウンジ等は日常から離れてリラックスするためのリゾートホテルにとって極めて重要な共用部門であるといえます。

通常これらの部門は一階に設けられ、また、レストラン等も同一階に設けることが多い訳ですが、レストランでは客席は共用部門である一方で、厨房は管理部門であることに動線上注意する必要があります。

また本課題では、コンセプトルーム(地域特産品、伝統工芸品等に関する小イベント、ワークショップ、交流等の場となる)や地域ブランドショップなども上記に関連して設ける室として特に指定されていることにも留意する必要があります。

浴室トレーニングルーム等の計画

浴室及びトレーニングルームは、やや機能上性格が異なるため、地階に設けることとし、この場合、併せて、設備機械室等を配置するのが一般的な解といえましょう。

なお、浴室、トレーニングルームの配置については、1階共用部門との動線上の関連及び景観への眺望や外部リラクゼーションスペースとの関連にも配慮したものであることが求められます。

パッシブデザインの計画

パッシブデザインについては、採光、通風に有効な吹き抜けを設けること及び太陽熱、地中熱、井水の利用が指定されており、以上の条件は、概ね想定の範囲内の事項ともいえますが、吹き抜けをどのように出来るだけ建物の中心部に有効に設けるかは、建築計画上の重要なポイントとなる事は申すまでもありません。

設備及び構造計画

設備計画上、本課題では、空調設備は外気処理空調機+ファンコイルユニット方式とすることが指定されていて、それらが設備計画全体と整合していることが求められる点が留意点といえます。

また、構造計画上の留意点としては、課題条件より敷地の南側が軟弱地盤であり、かつ敷地の勾配形状から建物に偏土圧がかかり、回転モーメントが生じること等が考えられることから、この場合、安定地盤である地中2.5mの深度を底盤とするベタ基礎を採用することが一般的な考え方といえます。

 以上に記したような事項が、本試験の課題条件に係わる計画上の主な留意点として挙げられるもので、いずれも試験の評価項目上の重要ポイントといえますが、中でも最も重要なポイントは、平成21年の一級建築士試験の内容の見直しとして公表された際に空間構成においては足切り点を設けるとされていることからも、建築計画の基本構成が極めて重要な評価ポイントとなると考えられ、本試験では、前述のように、L型形状の平面となった場合の、平面計画上の宿泊客の動線、宿泊客と非宿泊客の動線、管理動線、それらの各部門の明確なゾーニング等の計画が極めて重要なポイントとなると考えられます。

 このため、設計製図試験の合格を確実にするためには、しっかりした建築計画力を養成することが必須条件となるわけですが、建築計画力を養成することは、短期間でなかなか難しく、また建築計画力を養成することは、計画上の考える力を養成することであって、課題が何であるかは直接関係ありません。
以上から、本試験の課題発表前より、建築計画力の養成を着実に始め、本試験の課題発表後は、課題に特化した準備に集中するのが、合格を確実にするための重要な鍵であるといえます。

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